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板垣ゼミ(社会学科)「メイキング・オブ・卒論」

下和田 朋子さんのメイキングオブ卒論
「若者の携帯電話依存とパーソナルネットワーク
:携帯電話における飢餓実験をもとに」

まず、卒論のテーマを簡単に教えてください。

若者は携帯電話に依存しているということがよく言われますが、それは本当だろうか、本当だとしてそれはどういう意味なんだろうか、ということを考えてみようと思ったんです。漠然とした「孤独恐怖」があるとかいう話があるのですが、それには何となく違和感があったんですね。それで、具体的な人のつながりのなかで携帯電話がどういう位置をしめているかを調べてみようとしたのです。そのために何人かの人を対象に、「飢餓実験」といって、実際に3日間ほど携帯電話を預かって、実験期間中とその前後で、その人がとったコミュニケーションがどう変化したか、携帯がないことでどう思ったかなどを調べました。

なぜ、こうしたテーマを選んだのですか?

かなり直接的な理由からです。私の生活にとって携帯電話は手放せない存在です。ですから、「携帯と若者」というテーマは自然に出て来ました。特に気になっていたのが、「自分がふだん依存している携帯電話がなくなったら、どうなるだろう?」という疑問でした。それでゼミの先生に勧められて、メディア学科の先生に話を聴きに行ったときに、「飢餓実験」の存在を知りました。

でも、携帯電話の飢餓実験はこれまで行われたことはありませんでした。だから、自分が取り組む意義があると思ったんです。先行研究がない分野をテーマにすることで、何か新しい発見があるかもしれないと思いました。

では、具体的な執筆過程を教えて下さい。

まず4月に、漠然としたテーマ(「若者と携帯電話」)を決めました。この時点ではまだ、自分がやりたいことを何となくテーマにした感じでした。しかしゼミでのプレゼンや議論などを経るうちに、だんだんと形になっていきました。色々悩みながら、先生に紹介していただいたメディア学科の柴内教授に相談したのは、7月です。柴内教授に相談した後、夏休みには先生に教えていただいた文献を読んだり、飢餓実験の日程調整をしたりしました。本格的な実験は10月から開始しました。そして実験結果が出た11月に、結果の考察を行い、執筆は11月から12月にかけておこないました。最後の方はスケジュールが詰まっていて、かなり大変でした。

携帯電話を一定期間使わないようにしてもらう実験には、苦労もあったのではないですか。

最初は、被験者になってくれる人が集まらなくて苦労しました。携帯電話を使わないというのは、今の社会ではなかなか難しいことだというのが分かりました。でも最終的には、身近な友達に協力してもらったので、自分も含めて5人集めることができました。ただ、被験者の方々の意見を聞くと、想定していた1週間も携帯を使わないというのは無理だということで、結局は3日間の実験になりました。実験中は、小さなノートにその都度思ったことなどを記入してもらい、携帯を使わない日常で被験者がどのようなことを感じたのか、というデータを集めました。

結果はどのようになりましたか。

実験結果は意外なものになりました。結論から言うと、若者は携帯電話にそれほど依存していないということが判明したんです。3日間の実験が終わってみると、意外にみんな携帯電話がなくても大丈夫だという結果で、驚きました。普段からよく携帯電話を使っているという被験者のうちの1人は、“今までは時間があったから、携帯電話で暇をつぶしていた”ことに気が付いたり、“なくても生活できる”と感じたといいます。かなり携帯の使用頻度が高かった被験者でもこのような結果になったんです。

私自身も、携帯を使わない3日間は、意外に平気でした。多少不便ではありましたが、それほど重大な問題は起こりませんでした。携帯電話の代わりに自宅のパソコンメールを使ったり、家の電話を代用したりしていたので、必要以上に焦ることもありませんでした。自分が携帯を持たない分には、あまり支障はないのですね。

むしろ大変だったのは、私が普段よく連絡を取っている友人(男性)が飢餓実験をしている期間でしたね。彼自身は携帯がなくても何の問題もないと感じていたようなのですが、私はもともと彼とよく連絡を取っていたので、コミュニケーションが取れなくて不便でした。感情的にも不安定になり、連絡が来ないのはつらかったです。

なるほど。その結果、携帯電話というコミュニケーションメディアの特徴が分かりますね。

はい。つまり携帯電話というメディアは、自分から連絡を取る行為についてはなくなっても不便さはあまり感じないのですが、相手から連絡が来なくなると何か落ち着かない、という特徴があるのです。

携帯は“わかりやすい便利さ”のためにあるのではなく、皆が持っているから持つ、持たなくてはならない、という側面が大きいコミュニケーションツールだと思います。皆が持っているからこそ、周囲の人は携帯を持っていない人に対して「連絡が取れない」と不便さを感じるのですね。

卒論の執筆作業が終わった今、1年間を振り返ってみて、いかがですか。

選んだテーマが、もともと自分が興味を持つ対象なので純粋に楽しめました。やっぱり、自分にとって身近なテーマを選ぶことが大切だと思います。

また、これから卒論に取り組む4回生には、自分の続きをやってみてほしいとも思っています。私の実験では、被験者の属性(男女や、アルバイトの有無など)による結果の変化は出ませんでした。でも、もしかしたら自宅生と下宿生ではまた違う結果になるかもしれません。それに、大学生以外の人にも実験をしてもらうとどういう結果になるか、やってみてもいいと思います。まだまだ取り組めていない部分も多いので、その点は今後の課題ですね。

あと、卒論の執筆には多くの時間がかかるので、早めにテーマを決めて取り組むことが重要です。何でも早め、早めにしておけば、後でゆっくり考察したり執筆したりすることができます。下級生のみなさん、これからじっくり頑張ってください。
飢餓実験に使用したノート(実験中の感情を記入してもらったもの)

飢餓実験に使用したノート
(実験中の感情を記入してもらったもの)
同 被験者の人間関係図

同 被験者の人間関係図