1. ホーム
  2. 創造教育
  3. 卒業論文作成を振り返って
  4. 卒論作成を振り返って(小林 絵梨衣)

卒業論文作成を振り返って

卒論作成を振り返って

小林 絵梨衣
(空閑ゼミ)

JR福知山線脱線事故。私が卒業論文にこのテーマを選んだのは、「自分がもし被害者だったら」と考えたことがきっかけでした。いつも乗っている電車だったら‥と考えたときに、私も「被害者」になり、この事故が他人事とは思えなくなってしまいました。事故を知りたいと思った。被害者の苦しみを知りたいと思った。理解したいと強く思った。そして、知れば知るほど、一人ひとりの気持ちを理解しなければ、事故を忘れてはならない、と強く思ったことが、今回のテーマ設定につながっていきました。

書き進めていく中で、多様な価値観を尊重して融合し、誰からも批判されない「完璧な答え」にたどり着くことが、ゴールだと勘違いしてしまい、結局自分の考えがまとまらなくなるという困難に直面しました。そんな時、ゼミの仲間や友人と意見交換の場を作り、異なる考え方のぶつかり合いの中から本当に自分が言いたいことを見つけ出す経験をしたことで、自分の考えも多様な価値観のうちの一つであり、それを融合した上で、お互いの考えをぶつけ合い、高め合っていくことこそが尊重であることに気づきました。完璧を目指すのではなく、「私はこう考えます。あなたはどう考えますか?」という視点で、私の、私だけの論文と向き合っていきました。

ゼミでは、春学期にそれぞれテーマを決定し、そのテーマを選んだ経緯、卒論で主張したいこと、を発表していきました。夏休みのゼミ合宿時には、章立てを発表し、目次を作っていき、秋学期からは各々執筆段階に入り、章毎の概要、現時点での執筆状況を報告していきました。1年間でひとり3度の発表時にはいつも、その時点で困っていることを皆で共有する時間があり、自分の困っていることを皆で解決していく場が設けられていました。先生の「卒業論文はひとりで書くものではない」という言葉もあり、ゼミの仲間皆で、論文に取り組んでいけたと思います。

本当にひとりでは、書き上げることはできませんでした。自分が被害者でないということもあり、考えをまとめていく中で、自分自身の中で意見の葛藤が何度もありました。しかしその度に、友人と話す機会があり、先生に相談する機会があり、考えを整理することができました。誰からも批判されない完璧な答えを目指すと議論はとまってしまい、新しい考えも生まれなくなってしまう、常に他者からの批判や意見に応える視点を残しつつ、議論をすることが、私の自由な新しい考えの種になることに気付けました。この卒業論文は「完成」したとは思えません。むしろ、私の中で完成することはないのだと思います。これからも、このテーマと向き合い、自分なりに考え続けていきたいと思います。

提出時間ぎりぎりまで、悩み続けていた私を支えてくれ、「皆で出しに行こう」と言ってくれたゼミの仲間を始め、一緒に刺激し合い、励まし合い、意見をぶつけ合える人がいたからこそ、現時点での私の卒業論文ができたのだと思います。この4年間で学び得たことはもちろん、私が得ることのできた多くの人の存在が、この卒業論文には詰まっていると思います。一生忘れることのない私の卒業論文ができたことに感謝でいっぱいです。