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  3. 社会福祉学科 野村ゼミ 北九州市におけるゼミ交流討論会の報告

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報告 (野村裕美)


 野村裕美ゼミ(3回生)は、春学期は「暮らしの中の救急医療」をテーマに、地域生活において人々が安心して暮らすためのニーズと救急医療のあり方ついて理解を深めてきた。秋学期には、我が国の救急医療の現状(救急診療・救急搬送・救急情報提供を含む救急医療体制)について調べ、ソーシャルワークの立場からの問題解決策の提案を検討してきた。
 外国人、一人暮らし高齢者、医療的ケアの必要な子どもたちなどの事例からは、支援の仕組みつくりが急務であることを学んだ。同時に、弁護士からは救急医療をめぐる法的課題について学び、また、救急医療につながったことによって、児童虐待や自殺企図、生活困窮、アディクションなどそれまで表面化してこなかった家族の課題があらわになることも学び、仕組みだけではなく、個々の事情に柔軟に対応したり、やはり仕組みだけでは補いきれない見落とされがちなニーズをきちんと救い上げる人による支援の必要性を学んだ。
 私たちは確かに救命されるのか。そしてどう救命されるのか。救命される立場にある人々のニーズにソーシャルワークは的確にアウトリーチし、その人の命・暮らし・人生にどのようにアプローチできるのか。今年度の総まとめに、「ニーズ対応型支援の担い手になるために」と題し、2019年2月18日~19日にNPO法人抱樸を訪問した。NPO法人抱樸は、北九州の野宿者、ホームレスの自立支援活動をしている団体である。経済的・物理的貧困に答えるだけではなく、人間関係的貧困があることに着目し、徹底して人と人が伴走しあう新たな支え合いの社会づくりを提案してきた。抱樸の活動は、地域共生社会の重要な潮流である自立支援の政策のあり方に大きな影響を与えてきた。
 今回の訪問目的は以下のとおりである。第一に、社会的孤立等により生じる地域生活課題がどのようなしくみで起こっているのか、第二に、地域生活課題から的確にニーズを発見するにはどうしたらよいか、第三に、個別ニーズへの対応から仕組みづくりへと支援を展開するにはどのような工夫や思考が必要か、以上三点を通してソーシャルワーカーの開発的機能について学ぶこととした。今回の交流体験から、NPO法人抱樸の生活者や支援者の方々との交流から、福祉的課題だけにとどまらない地域生活全体のニーズの実際について想像力と創造力を発揮して考えぬく経験を積むことができればと思い、北九州市小倉を訪問した。
 訪問プログラムについては、抱樸のボランティア部の職員の方に企画調整をお願いし、以下の内容となった。
〇1日目:2月18日
 抱樸館北九州・東八幡キリスト教会訪問
 13:00 事業説明
 15:30 誕生会見学 (互助会なかまの会主催の2月生まれの誕生会への参加)
 16:00 支援物資提供、教会見学
      ボランティアとの交流(ホームレスから自立し現在ボランティアスタッフ
      として活動のお二人との交流)
 18:30 抱樸の調査研究事業に携わる北九州市立大学稲月先生と坂本先生、
      並びに抱樸の学習支援ボランティアグループの学生さんたちとの交流会

〇2日目:2月19日
 自立生活サポートセンター小倉訪問
 10:00 スタッフとの交流
 11:00 振り返り

 初日、互助会の2月の誕生会に参加した。互助会とは、ボランティア部に位置する会であり、会員相互の助け合いのために独立した会費で運営されているものである。月500円を納入することで、誕生会や卓球・カラオケ・囲碁・将棋・カフェなどのなごみ開放への参加、長寿の祝い、入院見舞い、結婚祝い、互助会葬などの特典が付いている。イベントに参加するとレストランポイントとしてためることができたり、ちょっとした手助けをお願いしたい時に100円から依頼をすることができるしくみもある。互助会の中には、野宿経験のある人のグループ「なかまの会」というものがさらにあり、メンバーへの定期訪問、なごみ開放などの企画運営などを行い、相互の支え合いの活動をしている。当日は、今現在抱樸館で暮らしている人だけでなく地域で暮らしている抱樸館出身の人たちも多数参加していた。ビンゴゲームの進行、運営は互助会のメンバーとボランティアさんで運営されており、途中ケーキがふるまわれ、大変にぎやかでゆったりと楽しい時間を過ごすことができた。
 その後、道路向かいにある東八幡キリスト教会に場所を移し、森松専務理事の講義を受けた。森松さんには、ホームレスの人が救急医療が必要な状況にあっても、なかなか診療してもらえなかった当時の事例について詳細をお話いただいた。続いて、奥田ボランティア部長により教会案内(礼拝堂、浸礼槽、記念室、シェルターなど)をしていただいた。記念室では、抱樸とご縁のあった方々の思い出のお話を伺うことができた。最後に、「なかまの会」の会の活動メンバー2名の方から、野宿者であったかつての暮らしと、今の暮らしについて、仲間を支える立場の活動にも関わっている率直なお気持ちなどについてインタビューする機会をえることができた。
 翌日は、勝山公園のそばの生涯学習センター内に場所を移し、自立サポートセンターで活動する3人の職員のみなさんとお話する時間をいただいた。就労準備事業での関わりから見えてくる暮らしのほころび、すまいと生活一体支援である市内の不動産会社と家賃保証会社との連携でやっている新たな取り組みや、子どもまるごと支援の取り組みなど、抱樸の事業の全体像についても詳しく解説いただいた。特に子どもを通じた取り組みは、貧困の連鎖を断ち切れるかどうかの新たな挑戦中でもあるとのお話、また、ずっと関わっている強みをデータベースに蓄積していく取り組みも大変興味深く、あっという間に二日間のプログラムが終了した。抱樸は、いつまでも、これからも、「当たり前」にとらわれず、今目の前にいる人のニーズに合うように、形を合わせて、しくみを作る活動を持続してきた。北九州市立大学の研究者などと連携し、さまざまな人たちの力を合わせて試行錯誤をしてきた経過があることがわかった。私たち一行に誕生会のケーキをふるまってくださった互助会の皆様、お迎えいただいた奥田知志牧師をはじめとする抱樸の職員の皆様、夕食会にご参加いただいた北九州市立大学の稲月先生、坂本先生、学生ボランティアの皆様、本当にお世話になりました。          

【参加学生による感想】
●NPO法人抱樸事業説明
 (奥田あかり)
 NPO法人抱樸の成り立ちや背景をうかがい、今ある制度が正解とは限らないということを学んだ。確かに何かをするにはある程度の規範や制度が必要であり、それが無ければできる支援もできなくなると思う。しかしその制度を絶対だと思いこんでしまうことで苦しんでいる人や助けられるのに助けられない事例もあることを知った。ただ制度を変えることや生み出すことは時間もかかり労力も必要になるため、踏み出す人は少ないだろうし自分がもし支援する側になっても今ある制度でいかによりよい支援をするかを考えると思う。だからこそ抱樸さんがしていることは本当に相手のことを救いたいという気持ちからできることであり、そこに魅力を感じられたフィールドワークになった。

(舟口宝)                                       
 私はホームレスについてそれなりに学んできたし、偏見を持っている自覚がなかった。しかし今回お話を聞いて、「なぜ働かないのだろう」と無意識に思っていたことに気づかされた。住所もなく、身なりも綺麗とは言えない状態で面接に行っても受からないと聞いて納得した。言葉は良くないかもしれないが、一度落ちてしまったら一人では這い上がれないのだと感じた。だからこそ抱撲のように根気強く手を差し伸べてくれる場所が必要であると思った。また、元ホームレスの方がボランティアをしているということに関しては、当事者にしかわからないことがあると思うし、そこで「助けられてみよう」と思えた人もきっといるだろう。ボランティアになった側も役に立てている、必要とされていると感じられることはとても大切なことであるし、それがまた自立へと繋がるのだろうと思った。

(樋之本有那)
 かつてホームレスであった方が、その後自立され、今は支援者としてボランティア部のスタッフとして活動しているという。そのような立場の方からお話を聞いたのは初めてであり、とても貴重な時間であった。お話しの中で、プライドが邪魔をして、助けてとなかなか言えなかったといっておられた。私はプライドをあまり持ってないように思うので、ここまで極限な状況であっても、プライドが出てきてしまうということは、理解し難しかった。ただ、このように思うのも幸いにも安定的な暮らしを出来ているからだと思う。現在は、ボランティア活動を積極的にされているが、当事者だからわかること、分かり合えることはたくさんあり、ボランティアさんをきっかけに事が動くこともあるのだろうなと思った。 


●東八幡キリスト教会
 (後藤似菜)
 私は今回の訪問で初めて教会に入ったが、イメージとは違い、温かみのある照明と木の素材から温もりを感じた。教会の一角の記念室では引き取り手のない遺骨を引き受けられていた。誰の目にも触れられることのなかったであろう人があの場所で、生きた証を残せることの意味の大きさを感じた。出会いから看取りまでの支援とは何かいうことがあの場所で少し分かった気がする。

(福井舞帆里)
 東八幡キリスト教会を見学させていただいた。教会の中は、明るく落ち着きのある雰囲気であった。天井からは電球が吊り下げられており、自分自身が光照らされているような気分だった。私の考えではあるが、自分の中で何かモヤモヤを抱え、心が痛んでいる人はなかなか顔を上にあげられず、うつむき、自分を咎めているイメージである。教会の電球は、人の近くにあることで人を光照らすだけでなく、少しでもその人が上を向けるように、またどんな人でも光は近くにある、といった意味合いもあるのではないかと思った。また、教会の中にある納骨堂も見学させていただいたが、教会の中になぜ納骨堂があるのだろうと思った。その後の奥田さんの「一度出会ったらその人とはもう家族なのだ」という言葉が答えだと思った。亡くなった方が同じ場所に納められているということは、皆さん抱僕の家族なのだと感じた。そして亡くなった後に、皆さんが集まれるこのような場所は、その人にとって一生の居場所になるのではないかと感じた。最後に、抱僕では炊き出しのための支援物資を集めておられ、決して炊き出しを行っている人だけで支援が成り立っているわけではなく、たくさんの人たちによって抱僕のホームレス支援は行われているのだと感じた。


●学生交流
(下岡尚輝)
 北九州市立大学の学生さんとの交流からは、抱樸でのボランティア活動の内容、具体的には炊き出しや学習支援などを行なっていることを聞きました。また、ボランティア参加者の集め方については、学内でチラシを配っているというふうに話していました。抱樸でのことだけでなく、お互いの普段の大学生活や私生活についても話し合い、北九州と京都での暮らしの違いに会話も弾みました。こうして普段は関わる機会のない学生のみなさんとの交流は、今後の勉学意欲にも良い刺激を受け、自分も負けていられないという気持ちになりました。

(會田優輝)
 北九州市立大学の学生の方と交流する中で、私は社会福祉士養成の環境の違いに着目した。私が同席した学生は文学部のなかで福祉を学ぶコースに在籍されており、社会福祉士を目指しているということであったが、同大学では実習先の選択肢が2つしかなく、それも児童相談所と児童養護施設の2択であり、分野が偏っているそうだ。児童相談所は同志社大学で選べる実習先の中には現在ないため個人的にはうらやましい面もあるが、児童分野以外に進みたい、あるいはもっと広い分野を学びたい人間にとっては不十分と言わざるを得ない。同じ京都の大学の中でもこうした実習先に関する選択の広さの差は存在しているようだが、九州でも同様の状況があることが分かった。社会福祉士はその関わる地域によって働きかけを変える必要はあると思うが、資格取得の段階ではどの都道府県、大学にいても格差なく、全国一律の基準が設けられるべきであると思う。実習内容の問題だけでなく、社会福祉士の養成にはまだまだたくさんの課題が残されているということが今回の交流で明らかになった。

(松岡幸祐)
 北九州大学の学生との交流会で、1つ年上の先輩の話を聞くことができたことが非常に刺激的で私自身の今後のためになると思った。この合宿中にお世話になった抱樸の施設の子ども部門でボランティアをしている方で、私も母子生活支援施設に実習に行った身として、お互いに知らないことを共有し合えたと思う。

○このフィールドワークの位置づけ
・今年度ゼミ研究活動のまとめ
・同志社大学社会学部ゼミ交流討論会事業の一環

日程
2019年2月18日(月)~2月19日(月)(1泊2日)

行き先
NPO法人抱樸(ほうぼく)


参加者
社会福祉学専門演習Ⅰ・Ⅱ受講者(社会福祉学科3回生)13名

引率
野村裕美(ゼミ担当教員) 

社会福祉学科 野村ゼミ交流フィールドワーク2018

旅程

2月18日(月)07:15 集合JR新大阪駅
07:35 乗車JR新大阪駅発ひかり491号
09:54 到着JR小倉駅
10:00 打ち合わせ①(駅周辺カフェ等)
12:00 移動、昼食
13:00 プログラム開始
NPO法人抱樸
17:00プログラム終了
18:00ふりかえり・移動
19:00打ち合わせ②(食事/小倉駅周辺)
20:00移動(宿舎へ)
2月19日(火)
08:30宿舎出発
09:30プログラム開始
(NPO法人抱樸)
12:00プログラム終了
13:00昼食(駅周辺)
14:00京都へ出発/京都駅にて解散